青山商事、AOKI、はるやま、コナカ。
紳士服チェーン店の四天王と言われている4社ですが、
決算を見てみると、非常に苦戦していることがわかります。
特に深刻なのは営業利益で、24~48パーセント減なので、
経営的にかなり厳しい状態にあると言えるでしょう。
では、なぜ、紳士服チェーン店がここまで厳しい状態に置かれているのか、
その原因について探っていきましょう。
紳士服チェーン店が苦戦している最大の理由
最大の原因は、団塊の世代の退職です。
団塊の世代は、スーツを着るのが当たり前の文化だったので、
大量消費をしてくれる客層だったのですが、
団塊の世代が退職したせいで、需要が大幅に落ち込んでしまいました。
では、他の世代はどうかというと、
団塊の世代とは違って、スーツを着るという文化はそれほど強くはありません。
IT系の会社であれば、カジュアルでの出社が当たり前。
また、働き方が多様化していて、スーツを着なければならないという意識は低い。
なので、基本的に、団塊の世代以外の世代では
もはやスーツ文化は衰退していると言ってよいでしょう。
さらに、最近は、本格的な仕立て屋さんやデパートでも、
低価格帯(3~5万円ぐらい)のオーダースーツが流行っているので
誰もが、ちょっと手を伸ばせば高級スーツを着られるようになりました。
また、安さで言えば、イオンや西友、イトーヨーカ堂が1万円の格安スーツを販売。
なんと、ユニクロではスーツが7000円で手に入るので
安さを売りにしていた紳士服チェーン店の強みが
ぼやけてしまったことも大きな要因です。
数々の打ち手も思ったような効果があがらない状態
当然、紳士服チェーン店も、団塊の世代の退職は予想していたので、
今日まで様々な対策を打ってきました。
そのひとつが、レディーススーツ市場への進出です。
働く女性が増えたので、レディーススーツの需要は高まっており、
紳士服チェーン店はレディーススーツ市場の拡大に努めてきました。
確かに、レディーススーツは当たりだったのですが、
残念なことに、メンズと比べて市場規模がかなり小さく、
もうすでに頭打ちになっている感が否めません。
なので、メンズからレディースという横展開は
結果的に収益向上にはつながりませんでした。
次に、紳士服チェーン店が仕掛けたのがカジュアル市場への進出ですが、
強豪のファストファッション店がしのぎを削っているレッドオーシャン市場なので、
市場自体は大きいのですが、風穴を開けることはできませんでした。
そして、最近、紳士服チェーン店が精力的に取り組んでいるのが異業種への進出。
各社、結婚式場の運営やカラオケ店、焼き肉店など、
直接スーツとは関係のない業種に進出して、多角化をはかっていますが、
本業とまったく関係のない業種ではノウハウを活かすことができず、
結局、多角化がうまくいかずに、経営を圧迫する要因になっています。
紳士服は、市場が縮小していく衰退ビジネスである
まさに八方ふさがりという感じですが、
- 少子高齢化による市場の縮小、
- 年金2000万円問題や消費税増税による消費の低迷
によって、紳士服チェーン店は追い込まれることになるでしょう。
実は、紳士服チェーン店のように
需要減によって市場が縮小していくビジネスを衰退ビジネスと言います。
衰退ビジネスでやるべき戦略は、ただひとつしかありません。
それは、残存市場を占領すること。
恐らく、今後、大手4社が生き乗れることはないでしょう。
もっとも弱い1社消え、また1社が消える。
そして、その会社が消えたことで、残っている市場を
残った会社が占領することで、生き残ることができるわけです。
なので、無理な経営をせずに生き残ることを目標にすることが大事。
馬鹿みたいにお金をつっこんで派手に宣伝する。
勝算のない異業種への多角化を行う。
などは絶対に控えるべきです。
生き残ることを優先して、残存市場を占領する。
これが、衰退ビジネスで勝ち残る唯一の戦略なので、
無理な経営をして体力を奪われないように注意しましょう。
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